研究課題/領域番号 |
12480048
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
谷口 清 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50200481)
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研究分担者 |
篠田 晴男 茨城大学, 教育学部, 助教授 (90235549)
東條 吉邦 国立特殊教育総合研究所, 分室, 室長 (00132720)
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キーワード | 自閉症 / 社会性障害 / 事象関連電位 / 語音識別 / 視線認知 / P300 / 受動的注意 / 能動的注意 |
研究概要 |
呼んでも振り向かない、人の話し声に興味を示さないなどの自閉症児の早期兆候の背景に入力情報に対する注意・認知の困難があると推測し、学齢期の自閉症児について語音識別課題中の事象関連電位を記録し、健常児と比較した。初年度はミスマッチネガティビティ(MMN)によって無意識の識別過程には自閉症児と健常児の間に差がないことを明らかにした。2年目には言語音の意識的な識別課題中のP300が自閉症児で低振幅であることを明らかにし、自閉症児には入力情報に困難が存在する可能性を示唆した。最終年度の今年度は、語音識別時の刺激入力後の事象関連電位のうちMMNからP3aまでは高機能自閉症児では健常児と差がなく、P3bで明瞭な差が見られることを明らかにした。これは入力情報の意味に応じて注意を能動的に動員するプロセスに困難があることを示唆するものである。さらに今年度は視線方向の識別課題を課したところ、視線方向効果が自閉症児では認めにくいことも明らかになった。すなわち自閉症児は「自分を見ている目」に対する事象関連電位の左右差と反応時間差が認められず、健常児とは異なる感受性をもつことが示唆された。 今年度はあわせて自閉症の社会性障害の本質に関わる3研究(社会性の質問紙評定に関する研究、CPT課題による注意と社会性の関連の研究、社会性障害の早期兆候に関する研究)を行った。社会性障害の早期兆候の研究では10ヶ月から1歳半にかけての愛着行動により、自閉症の早期兆候をとらえることの可能性を示すことができた。本研究により自閉症児の社会性障害の他覚的指標の確立に向けて大きく前進することができたと信じている。
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