対話における視線の役割を、対話を妨害しない形で調べるため、アイコンタクト型対話装置を開発、それを用いて対話を収録、視線の使われ方を分析した。また、人がどの程度の視線方向の検出を行っているのか、アイコンタクトの状態をどのようにして認識しているのかを調べるために、「にらめっこ実験」を行い、アイコンタクトの認識がこれまで考えられてきたような、物理的現象ではなく、心理的現象であることを明らかにした。 アイコンタクトロボットの製作に関しては、ハードウェアとしては人の視線制御の速度に近い速度で動作可能なロボットヘッドが完成した.ロボットヘッドはシリアルポートを介してPCと接続されており、PC上の制御ソフトウェアを書き換えることで、様々な実験が可能である。研究は発達の研究への利用を小嶋が、また視線を用いた対話の実現を伊藤が行っている.前者については、本ロボツトを用いて、発達の現場での利用、人との共有注意の実現などの試みが始められている。後者については、視線検出の実時間処理の実現に時間を要し、現在やっと人の視線を自動追跡できるようになった段階である.現在、これを用いて人とロボットの対話実験を行っている段階であるが、予備的実験では視線を用いることでの人の振る舞いに興味深い結果が観測されている。本研究は、この3年で終了するのではなく、研究環境が整備された段階であり、対話への利用はこれからその結果を出していかねばならないし、またそれが可能であると考えている。 なお、以上の研究と平行して、心を読むアルゴリズムの研究、心を持ったロボットのアーキテクチャなどの検討、シミュレーションなどを行ってきた。これらのモデル、結果は本実験の背景思想となるものであり、それらの成果も、本研究の中で得られた成果である。
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