研究概要 |
1.研究代表者らが単離した上皮細胞特異的に発現するAP複合体μ鎖ホモログμ1Bは、上皮細胞における側基底面細胞膜への選別輸送に関与する。そこでチロシン・シグナル結合能を持たない変異μ1Bを作成し、その機能を検討した結果、TGN38やLamp-1の様に側基底面への輸送がμ1Bのチロシン・シグナル結合に依存するものと、LDL受容体やトランスフェリン受容体のように依存しないものがあること、また上皮細胞に特徴的な1層の細胞シートの形成はμ1Bを必要とするが、この細胞シートの形成にもチロシン・シグナル結合能は必要としないことが明らかになった(投稿準備中)。 2.神経細胞特異的に発現するAP複合体AP-3Bのサブユニットμ3B欠損マウスに関しては、加齢に伴いてんかん様のけいれん発作を起こすこと、また抑制性の神経伝達物質GABAの受容体拮抗薬によるけいれんは、若年のμ3B欠損マウスにおいても有意に誘発されやすいことがわかった。解剖学的にはKOマウスの海馬CA3の苔状線維のシナプス終末で、コントロールに比較して大きなシナプス小胞が有意に増加していることから、けいれん発作はシナプス伝達の異常に起因すると考えられる(投稿準備中)。 3.EGFやPDGFなど増殖因子の受容体はリガンドの結合にともないエンドサイトーシスされリソソームで分解されるが(脱感作)、このとき受容体の細胞質領域がユビキチン化を受けることから、ユビキチンがエンドサイトーシスおよびリソソームへの輸送に関与するとの仮説を立てその立証を試みた。ユビキチンを細胞質領域に持つキメラ蛋白を用いて、ユビキチンにはジ-ロイシン・シグナルという輸送シグナルが存在し、これがユビキチン化による受容体のエンドサイトーシスに寄与する可能性を示した(Nakatsu et al.,J.Biol.Chem.2000)。さらに、このシーロイシンシグナルはユビキチン化された受容体のリソソームへの輸送にも関与するという結果を得ている。
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