研究概要 |
本研究では、半導体鉄シリサイド(β-FeSi_2)を用いた室温発光ダイオードの作製を目的に実験を行い、本年度は以下の結果を得た。 1.Si中にβ-FeSi_2球を埋め込んだSi/β-FeSi_2球/Si構造からのPL強度は、用いるSi基板の種類に依存することが分かった。具体的には、酸素濃度の高いCZ基板ではPL強度が弱く、酸素濃度の低いエピタキシャル基板、FZ基板では、明瞭なPL発光が得られた。このため、酸素が何らかの形で非発光再結合に関わっていると考えられる。 2.Si/β-FeSi_2球/Si構造からのPL強度は、MBE成長Si層でβ-FeSi_2球をSi中に埋め込む際の成長温度にも大きく依存することが分かった。埋め込み温度が400℃、500℃、630℃の場合、β-FeSi_2のPL強度は、750℃のそれを基準にしてそれぞれ15,13,3倍と、成長温度が高くなるにつれて弱くなった。この原因はまだ明確では無いが、成長温度によりβ-FeSi_2,球内部の歪みに変化が生じたためではないかと考えている。 3.上記の成長条件を取り入れて、Sipn接合にβ-FeSi_2球を埋め込んだ発光ダイオードを作製し、波長1.6μmの室温EL発光を初めて実現した。ただし、EL強度は、注入電流量に比例して大きくならず、スーパーリニアーになっている。このことは、β-FeSi_2へのキャリアの注入がスムーズに行われていないことを示しており、非発光再結合中心が多数存在することを示唆している。
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