研究概要 |
バイオマスの有効利用をはかるため,バイオマスから発酵により得られた水素を燃料電池を用い電気に変換するとともに,副産物として得られた有機酸アルコールなどをメタン発酵しメタンを回収するシステムを構築することを目的として,本年度は高速水素生産菌Enterobacter aerogenesを用いたグルコースからの水素以外の発酵産物のメタン発酵特性を検討した。メタン発酵汚泥として広島県内の食品製造工場より採取した常温メタン発酵汚泥を種汚泥とし,E. aerogenesが生産する乳酸,酢酸,2,3-ブタンジオールおよびエタノールを,E. aerogenesの生成割合に合わせて添加した人口廃水を用いUASBリアクターを構築した。約100日間の馴養により廃液中の炭素源はほぼメタン化されたことから,水素(E. aerogenes)-メタン(UASBリアクター)2段発酵法は可能であることを確認した。そこで,我々の開発したE. aerogenes自己固定型リアクターを用い,10g/lグルコースを基質とし水素の連続生産を行い,その培養廃液を先に馴養したUASBリアクターに投入することにより,ハイブリッド発酵システムの検討を行った。水素生産は滞留時間1.7hで最大となり,水素生産速度は10mmol/l/hとなった。この時,ギ酸11mM,乳酸16mM,酢酸12mM,2,3-ブタンジオール30mMそしてエタノール30mMが生産された。この培養廃液をメタン発酵したところ,滞留時間3.1dとした時,ほぼ完全に炭素源を消費し2.0mmol/l/hでメタンを生成した。現在のメタン発酵槽への負荷速度ではメタン生成槽が水素発酵槽と比較して非常に大型化してしまうことから,メタン生成速度の更なる向上が今後の検討課題となる。
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