研究課題/領域番号 |
12556002
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
育種学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平井 篤志 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60023470)
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研究分担者 |
吉羽 洋周 日立製作所, 中央研究所, 主任研究員
中園 幹生 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70282697)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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キーワード | ALDH / アルデヒド脱水素酵素 / イネ / 冠水 |
研究概要 |
植物が冠水などの嫌気ストレスに弱い理由の一つとして、毒性の高いアセトアルデヒドの影響が考えられる。アセトアルデヒドは冠水中および冠水解除時に生じ、細胞の膜構造やタンパク質を変性させる。アルデヒド脱水素酵素(ALDH)はアセトアルデヒドを無毒化する酵素であり、イネでは少なくとも4種類の遺伝子が存在し、塩基配列を決定したが、2種類は細胞質型であり、残りはミトコンドリア型であった。イネなど冠水抵抗性の高い植物では、冠水中や冠水解除時にミトコンドリア型のALDH2が発現し、アセトアルデヒドを無毒化している可能性が考えられる。冠水状態におけるALDH2遺伝子の発現応答を調べたところ、ALDH2bのmRNAは冠水処理で急激に減少するが、ALDH2aのmRMは冠水処理で急激に増加し、冠水解除で元のレベルまで減少することが明らかとなった。一方、タンパク量は冠水中は増えず、冠水解除直後にかなり増えていた。冠水解除直後、蓄積されたエタノールから活性酸素により多量のアセトアルデヒドが合成され、植物に甚大な障害を与えることが知られているが、イネではこの障害をALDH2aが防いでいることが明らかになった。ALDH2aの機能を確認するために、冠水抵抗性が低いトウモロコシやオオムギで同様な実験を行った。冠水中や冠水解除直後におけるALDH2aの発現を調べたが、翻訳産物は確認できなかった。イネ科植物で冠水抵抗性のタイヌビエについても調べたが、冠水中や冠水解除直後に十分なALDH2aのタンパクを蓄積していた。これはイネにおける発現パターンと非常によく似ていた。そこで、ALDH2a遺伝子を冠水抵抗性が低いアラビドプシスで過剰発現させた。その形質転換植物を低酸素状態に置き、再び酸素を供給すると野生種に比べて、生存数がかなり多かった。これはALDH2aを過剰発現させることにより、冠水に弱い作物を冠水抵抗性に改変できることを示す初歩的な成果である。
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