研究概要 |
1.逆構築半合成フシコクシン類の調製研究 フッ素原子を導入した生合成擬似中間体である光学活性19-及び20-フロロフシコッカ-2,10(14)-ジエン-8β-オールを,化学合成がされている19-及び20-ヒドロキシフシコッカ-2,10(14)-ジエン-8β-オールから,それぞれ化学誘導することに成功した。さらに,これらについてフシコクシン生産菌による代謝変換を検討した結果,本菌液体培養の生育初期にこれらの合成擬似中間体を添加することによって,これら二種類の中間体化合物から高い変換率でそれぞれ19-及び20-フロロフシコクシンJを得ることができた。フロロテルペン類の代謝変換研究はほとんど前例がなく,ここに新規な半合成法による人工フシコクシン類の創製が可能となった。 2.フシコクシン新生産菌における関連物質研究 フシコクシンAの生産を明らかにした本邦産のモモ枝折病菌N-2株から,新たな極性フシコクシンとしてフシコクシンPと命名した新化合物を分離・構造解明した。また,フシコクシンHの3位エピマーを新化合物として分離同定し,フシコクシン類の生合成経路上の重要な化合物を得ることができた。前者は10ppm濃度のABA存在下においても,強いレタス種子発芽促進活性を示した。 3.新規フシコクシン類の生物活性の検討 半合成フシコクシンとして得られた新19-及び20-フロロフシコクシンJについて,2ppm濃度のABA存在下でレタス種子の発芽試験を行った結果,両者は天然のフシコクシンJよりも高い発芽促進活性が認められた。また,lngのNGF存在下で神経(PC12)細胞に作用させた予備試験では,両化合物とも樹状突起の強い伸展増強作用は認められなかった。 4.カビブラシノステロイドの探索研究 ブラシノステロイド型水酸化反応を行うと期待されるキノコの人工液体培養の条件検討,及び鹿角霊芝抽出物の検索を進めている。
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