研究概要 |
針葉樹の葉緑体DNAが父性遺伝する特性を利用して、親子鑑定において父親(花粉親)を特定するためのDNA分子マーカーの開発を進めた。その概要は次の通りである。 1.葉緑体DNAの中で、変異性が高いと思われる遺伝子間スペーサー領域約9,400塩基対の塩基配列をクロマツ16個体で決定し、種内個体間の変異性を評価した。その結果、3箇所で一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)が発見された。今回、塩基配列分析を行った領域は、全葉緑体DNAゲノムの7.8%にあたり、今後、さらに調査することにより、新たな変異が多数存在していることが予想される。 2.葉緑体DNA内に散在するSSR(simple sequence repeats)変異を17個体を用いて調査した。調べた12箇所のSSR領域のうち、4箇所で合計12種類の変異が確認された。さらに、これらのSSR変異を効率的に分析するために、Multiplex-PCR法の最適化を行った。 3.上記1と2の結果から、これまで、葉緑体DNAでは種内変異がほとんどないとされてきたが、かなりの変異を内在させていることが認められた。このことから、葉緑体DNAが個体識別マーカーとしても利用できる可能性が示された。 4.葉緑体DNAを父親鑑定マーカーとして利用するためには、その父性遺伝の完全性を確認しておくことが不可欠である。このために、葉緑体DNAハプロタイプを異にする個体間の人工交配(20交配組合せ)を行った。
|