各民族における集団遺伝学的特性は、遺伝性疾患の疫学的プロファイルを変容させる。この要因として社会的隔離、地理的隔離や通婚圏による制限、ポトルネック現象やGenetic driftが挙げられる。 我国は、単一の民族により形成され遺伝的に均質であると考えられてきたが、本研究で明らかにするように中世から近世にかけての封建制による社会隔離による遺伝的影響は極めて大きく地域的な遺伝的浮動を生み出した。 この結果地域毎に遺伝的隔離が成立し、劣性疾患遺伝子については、創始者変異が認められることが本研究によって証明された。しかし、この一方、優性疾患では地域的な偏りはあるもののこうした創始者効果では証明できないことも明らかになった。 したがって劣性疾患ではわが国においては患者が認められる地域では極めて効率よく遺伝子座の決定ができることが実際の例で証明された。 一方、遺伝疫学的な展開により地域に特異的な遺伝子変異が認められると考えられるが、こうした遺伝子変異あるいは多型の評価は困難を極める。我々は糖尿病に関わる遺伝子変化について蛋白の構造解析から機能障害を予測することを試みた。 歴史的、文化的な隔離により多くの遺伝性疾患の頻度は大きく異なる。今後、わが国における遺伝疫学の展開とともに、遺伝子群の突然変異の結果生じる蛋白質における構造異常と病態の関連の解明が望まれる。
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