研究課題
第二世代の遺伝子治療として、転写調節因子を不活化させるおとり型核酸医薬(デコイ)療法に注目し、血管病変発症改善の分子標的となる転写調節因子及びその特異的結合配列を検索してきた。血管病変発症、血管リモデリングに重要な特異的転写調節因子核内オーファンリセプター、その特異的結合配列の同定は血管病変の病態生理解明だけでなく、新規薬剤の開発、既存薬剤の新たな適応が期待される。我々は、レニンの組織発現特異性の分子機構に興味を持ち、レニン遺伝子の転写制御領域にエンハンサーとサイレンサーがオーバーラップした新規の遺伝子配列を見いだし、CNRE(cAMP Responsive and Negative Regulatory Element)と名付けた。CNREに結合する特異的転写因子を、Yeast One Hybrid Systemを用い、マウス腎臓cDNAライブラリーよりクローニングしたところ、ヒトLXB(liver X receptor)αと91%のホモロジーを有するmLXRαを得たが、mLXRαはレニン及びc-myc遺伝子発現に対して、RXR(retinoid X receptor)をヘテロダイマーとして必要とせず、mLXRαはcAMPにてレニン、c-mycの転写活性を促進した。しかし、mLXRαはCRE(cAMP responsive element)とは結合せずCREB(CRE binding protein)とは独立して作用することが明らかとなった。更に、我々はカフを用いたマウス血管傷害モデルにてmLXRαの発現増加に伴い、c-mycの発現が増加し、新生内膜が増殖する事を観察した。圧負荷心肥大モデルにおいてもmLXRαの発現が増加する事も観察され、mLXRαが心血管リモデリングに重要であること、更に遺伝子治療の標的となり得ることが示唆された。
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