研究概要 |
第一研究では、(1)父親の家庭での協力、夫婦関係、母親のストレスが、母親の養育行動(威圧的態度、親和的態度、拒否的態度)に及ぼす影響、(2)父親の家庭での協力が、父親自身の自我同一性に及ぼす影響、という2点について吟味するために、660家庭(有効回答)を対象に家事や子育てに対する父親の協力を尋ねる質問紙(尾形・宮下,1998)、夫婦関係を測定する質問紙(大野・柏木,1992)、母親の精神的ストレスを測定する質問紙(田中,1995)、母親の養育行動を測定する質問紙(田研・両親態度診断検査等を参考に作成)、父親の自我同一性発達を測定する質問紙(宮下,1987に太田,1990を加えたもの)を実施した。そして、(1)母親の養育態度の「威圧的態度」に着目すると、父親の家庭での協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」→夫婦関係の「夫に対する尊敬と信頼」「対等な関係」→母親の精神的ストレスの「自己閉塞感(の減少)」→「威圧的態度(の減少)」という因果関係が存在すること、(2)父親の家庭での協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」が父親自身の自我同一性発達の要因となること、などを見いだした。また、共働き(フルタイム)家庭、専業主婦家庭別に分析したところ、共働き家庭の方が、父親の協力の「家事への援助」がより顕著な影響力を持つなど、かなりの差異が認められた。 第二研究では、第一研究の変数に、母親の認知による「父親の家庭での協力」の変数を加え、415家庭(有効回答)を対象に質問紙調査を行い、「父親の家庭での協力」に関する父母の認知のズレが大きいほど、母親の不適応的な養育行動や精神的ストレスが増加すること、また、これは、共働き家庭より専業主婦家庭において顕著に見られること、などを見いだした。
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