研究概要 |
(1)子育てをしている家庭での「父親の協力」が、母親の適応(母親役割達成感、妻役割達成感)や幼児・児童の適応(攻撃性)、父親自身の適応(ストレス・コーピング)とどのような関連を持つのか、(2)「父親の協力」についての夫婦間の認識のずれが、母親や子どもの適応、父親自身の適応とどのような関連を持つのか、という2点を吟味するために、幼児または児童を持つ父親と母親604組を対象に、父親用として、家事や子育てに対する父親の協力を尋ねる質問紙(尾形・宮下,1998)、ストレス・コーピングを尋ねる質問紙(渡辺,1986)を、母親用として、家事や子育てに対する父親の協力についての母親の認知を尋ねる質問紙(基本的に、「父親用」と同じ)、母親・妻役割達成感を尋ねる質問紙(土肥,1991)、子どもの攻撃性を尋ねる質問紙(桜井,1991)等を実施して、検討を行った. そして、(1)父親の協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」が高いほど、母親・妻役割達成感が高いこと、幼児・児童の攻撃性が低いこと、父親のストレス・コーピングがより前向きなこと、等が見出された.また、(2)父親の協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」についての夫婦間のずれが大きいほど、母親・妻役割達成感が低いこと、幼児・児童の攻撃性が高いこと、父親が建設的なストレス・コーピングを用いる程度が低いこと、等が見出された。(3)さらに、(1)と(2)に関して、「専業主婦家庭」、「共働き家庭」別に検討を行うと、(1)(2)とも、専業主婦家庭において顕著な傾向が見られること、専業主婦家庭では、父親の協力の「家事への援助」も、一定の開連を有することなど、家族形態によって、その開連性に違いが見られることが見出された。
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