本研究では、具体的には、以下の合計4つの研究を行った.研究1では、幼児を持つ家庭を対象に、「父親の家庭での協力」に関する夫婦間の認知のずれと、夫婦関係、母親のストレス、母親の養育行動(威圧的態度、親和的態度・拒否的態度)との関連について検討を行い、夫婦間の認知のずれが大きいほど母親の不適応的な養育行動や精神的ストレスが高いことを見いだした。研究2では、父親の家庭での協力、夫婦関係、母親のストレスが母親の養育行動にどのような影響を及ぼすのか、また、父親の家庭での協力が自身の自我同一性にどのような影響を与えるのかという点について検討を行い、(1)母親の養育態度の「威圧的態度」に関しては、父親の家庭での協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」→夫婦関係の「夫に対する尊敬と信頼」「対等な関係」→母親のストレスの「自己閉塞感(の減少)」→「威圧的態度(の減少)」という因果関係が存在すること、(2)父親の家庭での協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」が父親自身の自我同一性の要因となること、などを見いだした。研究3では、幼児(あるいは児童)を持つ家庭を対象に、父親の家庭での協力と母親の適応(母親役割達成感・妻役割達成感)、子どもの攻撃性、父親自身のストレス・コーピングとの関連について検討を行い、(1)父親の協力の「子ども・妻とのコミュニケーション」が高いほど母親・妻役割達成感が高いこと、子どもの攻撃性が低いこと、父親のストレス・コーピングがより前向きなことなをが見いだした。研究4では、大学生を対象に、父親の家庭での協力と夫婦関係や家族機能、青年の自我同一性との関連の検討を行い、父親の家庭での協力が高いほど夫婦関係や家族機能が良好であり、また、青年自身の自我同一性も高いことなどが見いだされた。
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