源氏物語の本文及び注釈書資料の体系的な調査として、今年度は次のような計画を立てて実施し、大きな成果を得ることができた。 1 古記録における源氏物語関係資料の採集 2 源氏物語の本文及び注釈資料の調査と奥書、識語類の集成 3 注釈書類の解題と享受史年表の作成 鎌倉期の定家による『明月記』をはじめ、室町期の三条西実隆による『実隆公記』、さらに江戸期の数多くの記録類から源氏物語に関する資料を収集することができた。注釈書類については、国立国会図書館、国文学研究資料館、東海大学桃園文庫、天理図書館、京都大学図書館等に出かけ、およそ500点余の写本、版本の調査をした。これらの源氏物語注釈関係資料については、内容の詳細な調査のほかに、すべての奥書、識語類、序文、跋文についても記録していった。その資料にもとづき、1点1点の注釈書について、書名・著者・書誌・成立・内容・本文・文献の項目のもとに、解題を執筆している。現在のところ、およそ300点の資料について書き終えることができた。この過程で、従来知られていなかった新しい資料の発見があった。また、記録や奥書、識語類に記された資料と年号を収集し、年月順に配列し、享受史年表を作成しているところである。2年目の平成13年度中には、『源氏物語注釈書・享受史事典』を出版する予定である。
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