「源氏物語本文及び注釈資料の体系的書誌調査と総合年表の作成」の研究課題のもとに、平成12年度と13年度との2ケ年調査研究を進め、次の項目のもとに多くの研究成果を得ることができた。 1 源氏物語の本文調査 2 注釈資料の調査と総合年表 本文調査として、(1)嵯峨本源氏物語の性格については、従来すべて青表紙本系統の本文とされ、その後の流布本の祖本とされてきたが、大阪青山短期大学本を中心に、内閣文庫本とをあわせて54巻すべての詳細な本文調査を実施し、青表紙本を基本としながらも、河内本と別本が混在することを明らかにした。(2)源氏物語の本文と表現に関しては、青表紙本や保坂本のを取りあげ、自然、人物、引歌の方法等について考察した。 注釈資料の調査は全国各地の図書館、文庫等の調査を進め、およそ500点余の注釈資料の書誌や内容を確認し、その成果は『源氏物語注釈書享受史事典』として出版した。その中に、源氏物語の享受された年表を、平安末期から明治期直前にいたるまでの、記録類、日記等から収集し、総合年表として収録した。 この2カ年の調査研究によって、源氏物語の平安から江戸末期にいたる注釈資料はほぼ網羅し、享受史年表も作成したことは大きな成果であった。ただ、江戸期の日記、文書類はまだ知られていない資料が膨大で、この調査は今後に残された課題である。
|