研究概要 |
平成14年度は玉鬘巻から夢浮橋巻までの準拠と典拠の調査と整理、検討を行った。源氏物語全体を通して見ると、特に宇治十帖は準拠、典拠が少ないが、従来と同様に『河海抄』『花鳥余情』『細流抄』『眠江入楚』等の指摘を中心にして、中世近世のその他の注釈書類の指摘をも適宜採用し、整理し検討した。宇治十帖については、準拠、典拠と併せて引歌の類についても物語の構成に寄与すると考えられるものは取り上げた。宇治十帖の特色を理解する上で必要と考えたからである。今回で一応全体を通しての準拠と典拠についての調査と整理は終了したが、まだその注解については不十分なところが多い。今後の課題としたい。とはいえ、源氏物語の全体を通して準拠と典拠の傾向が展望できたことは大きな成果である。物語の方法を考える上でも有益な資料の提示である。 今年度の研究成果としては、「「帚木」巻の準拠・典拠についての諸注集成と注解-源氏物語の準拠・典拠についての研究(2)-」を明治大学文学部紀要『文芸研究』88号(2002年9月)、「「若紫」「紅葉賀」「花宴」巻の準拠・典拠についての諸注集成と注解-源氏物語の準拠・典拠についての研究(3)-」を同上『文芸研究』89号(2003年1月)、「The Structure of the Tales of Kingship, Family, and "Everlasting Sorrow"in the Genji Monogatari ; With the "Kiritubo" Chapter as a Starting Point](ACTA ASIATICA 83, THE TOHO GAKKAI, 2002)、『源氏物語の鑑賞と基礎知識 澪標』(至文堂、2002年9月)を発表した。
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