研究概要 |
樺太アイヌ語の母音の長短に関する文献と北海道アイヌ語の高さアクセントに関する文献資料[服部(1959;1967)と服部&知里(1960),Vovin(1993)]を批判的に分析、考察した。この先行文献から分かることは多くの語例が樺太アイヌ語の母音の長短と北海道アイヌ語の高さアクセントが1対1の対応があることが窺えるが、その規則的対応がない語例もかなりあり、それについての規則性についても考察した。 その結果を正式の文章にしたものではないが、8月末に日頭により東北大学文学部言語学セミナーにて発表、討論した。ここでの討論では有益なものが多かったが、特に例外的な語例について、更なる分析をする上での足がかりとなるものがあった。また東北大学の図書館所蔵のアイヌ語に関する資料文献収集も行った。 さらに8月末から9月初旬にかけて、実際に静内、沙流、鵡川にてアイヌ古老を訪ね、ウエペケレ、ウポポ、ユーカラを直接ビデオで収録した。アイヌ古老は上田トシさん、木村イトさんを被検者にお願いした。現在そのビデオのテープ起こしの途中であるが、高さアクセントに関して窺えることはすでにこの古老の方は日本語が母語になっており、その影響が非常に大きいように見えることであるが、まだ最終結論には至っていない。しかしながら、実際に生のアイヌ語の高さアクセントが先行研究で発表されたものと異なっていることがあり、またそれが日本語の影響と見られないものもあるので、その点に関してはこれからさらに分析を深める必要がある。
|