研究概要 |
合同部分群Γ1(N)の関数体の定義方程式を与える、従来のクライン形式から構成する生成元とは異なる、新たな種の生成元をワイエルストラスのP-関数から構成することができた。これらは2,3の個別のNの値に対しては、すでに生成元になることが知られていたが、すべてのNに対して関数体の生成元になることを証明し、この群により決まるモジュラー曲線の定義方程式を計算した。この生成元は従来構成した生成元より、はるかに簡単な、いわゆる、Reichertのraw formと同じ程度の定義方程式を与えるものである。この結果は平成12年10月に山形大学で行われた国際研究集会「Codes,Lattices,Modular Forms and Vertex Operator Algebras」で発表するとともに、学術雑誌に投稿している。この結果に基づき計算機により、この生成元からJ-関数がどのように有理式で表されるかを知るための実験を行っているが、予想以上に複雑な式となりさらに理論上、生成元の構成についての工夫が必要であることが認識できた。また、従来の生成元から得られた定義方程式の係数は有理整数であると予想しているが、この新しい定義方程式は有理数係数である。その分母に現れる整数がどのように現れるかを知ることは、定義方程式を有限体に還元して、この方程式の根から楕円曲線を構成するときに必要であるので、従来の定義方程式の係数の「整数性」と共に分母の性質についての計算機実験を行っている。さらに、付随して、この関数体の種数が2のときには、その自己同型は、すべて合同部分群Γ1(N)のAtkin-Lehner型involutionから誘導されることがわかり、その結果、部分体として含まれる楕円関数体の生成元が、上記の生成元から直ちに得られ、楕円曲線の標準的べき級数解の研究における例を作ることができた。
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