昨年度の研究で合同部分群Γ1(N)の関数体の定義方程式を与える、従来のクライン形式から構成する生成元とは異なる、新たな種類の生成元をワイエルストラスのP-関数から構成した。この結果は2001年5月17日付けでActa Arithmeticaに掲載が決まった。この生成元を用い、J-関数がどのように有理式で表されるかを知るための実験を昨年から引き続き行っているが、なかなか、理論的に使えるような結果が得られないので、今後どのように実験を行うか検討している。1つにの方向として、ある素数での方程式の還元を考え、有理点などのその性質を調べることを試みている。只、この種の生成元から得られた定義方程式の係数は有理数となるので、還元とこの分母にでてくる素数の関係を代数幾何的立場から考える必要がある。また方程式の係数自体の絶対値の大きさの評価についても実験と考察を行っている。この関数体の種数が2のときには、その自己同型は、すべて合同部分群Γ1(N)のAtkin-Lehner型involutionから誘導されることがわかり、その結果、部分体として含まれる楕円関数体の生成元が、上記の生成元から直ちに得られ、楕円曲線の標準的べき級数解の研究における例を作ることができたことを踏まえ、種数が2の曲線のJacobian varietyの代数幾何的性質を調べている。上記したように、定義方程式の素数でのreductionを考え有限体上の解の状況を実験的にを調べているが、この研究の応用として楕円暗号の構成を試みている。この関係で有限体上の楕円曲線の有理点群から得られる大きい位数の巡回群の系列の例をつくった。これは、虚数乗法をもつ楕円曲線がordinary reductionをもつところでは、そのFrobenius endomorphismが虚2次体の整数で表され、その整数環の底での表示による係数を見ることにより、巡回群であることを調べることができることを利用するものである。この結果はプレプリント・シリーズDMIS Research Reportに2001年に発表した。
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