研究概要 |
平成14年度の研究内容は次の通りである.有理形写像の値分布論の立場から,代表者の森は分担者の相原との共同研究で除外因子を持つ複素射影空間に値を持つ有理形写像の構成を行い,任意の効果的因子に対してその因子より定まるある範囲にある1より小さい任意の実数を除外指数に持つ代数的に非退化な有理形写像が常に構成できることを示した.これを用いてグリフィスの除外関係式が正規交差でない特異点を持つ因子の場合には成立しない例を構成した.更に特異点を解消した場合には除外関係式が成立することを示した.分担者の相原は,有理形写像が因子の逆像に関する条件下で代数的に従属するための様々な十分条件を写像の増大度に関する条件なしで与えた.その応用として非特異楕円曲線への正則写像が自己準同型で写りあう十分条件を与えた.また除外値の存在が一意性に問題にどのように寄与するか研究し,いくつかの一意性定理をあたえた.戸田は,からn次元複素射影空間への超越的な正則曲線の値域がN-劣一般位置にあり,除外指数の総和が極大であるときの除外指数について調べ,1)N>2n=2m(m:自然数)のとき,除外指数が1となるものが必ずある.2)N>nのとき,ある種の正則曲線に対しては除外指数が1となるものが少なくともN-n+1個あることを示した.力学系に関連して,仲田は,メビウス変換の不連続群におけるその極限集合上の作用および有理関数の複素力学系におけるそのジュリア集合上の作用に関するエルゴード理論について研究した.関川は,有理関数の不変でないファトゥー成分について,任意のn【greater than or equal】3に対して,連結度nのファトゥー成分をもつ有理関数の例を構成した.河村は,カオス的に見えるカオス構造も確率論的に見ると,顕著な規則性をもち,確率密度関数の収束という現象が現れることを示した.一方,関数空間や測度論の観点から,佐藤は,局所コンパクト・アーベル群のローレンツ空間上の平行移動不変な作用素のなす空間の構造を研究した.水原は,ハーディ空間について,Morrey関数とブロック関数およびリース・ポテンシャルに関連した弱分解定理を示した.
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