研究概要 |
平成12年度では、衝突エネルギーが非常に低い領域(100meV以下)でのMgイオンとBa原子の間の電荷移動反応の観測を行った。平成13年度では、この結果の解析および同じ衝突エネルギー領域においてMgイオンとCa, Zn, SrまたはYb原子の間の電荷移動反応の観測を行った。 平成12年度の結果におけるBa原子注入量、Mgイオン数、Baイオンの生成量などから100meV程度の衝突エネルギー領域における電荷移動衝突断面積は約10^<-22>m^2であることが分かった。これは、D. Rapp, and W. E. Francis, J. Chem. Phys. 37,2631(1962)での単純なモデルにおける理論計算と比較的よく一致している。 次に、他の原子との衝突による電荷移動反応の観測を行った。Baイオンに対してはレーザ-誘起蛍光スペクトルの測定によりその存在を確認できるが、他のイオン(Ca, Zn, Sr, Yb)を同様の方法で検出するには別のレーザ-システムがそれぞれのイオン種に対して必要になり、効率的な方法とはいえない。そこで、これらのイオンの存在はラジオ波共鳴法によって確認する。まず電荷移動が確実に起こることが分かっているBaイオンがラジオ波共鳴法によっても確認できることを確かめた。次に、Ba原子の代わりに他種原子を用い、電荷移動反応を起こさせてからラジオ波共鳴法によって他種イオンの存在を確認した。この結果、MgイオンとCa, Zn, Sr, Yb全ての原子種の間で有意で再現性のある信号が得られた。このことから、これらの原子とMgイオンの間でも100meV程度のエネルギー領域で電荷移動反応が起こることが分かった。
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