研究概要 |
前年度までに非常に温度の低い領域(100meV以下に相当)で、Mgイオと中性Ba原子の間で電荷移行衝突を起こし、その断面積測定値10^<-4>nm^2が理論計算とよく一致していることを確かめた。イオントラップによって、電荷移行された生成Baイオンも同時にトラップし測定感度を著しく向上させたことが実験成功の理由である。電荷移行はイオントラップ内に種種の低温イオンを作るのに適している。またレーザーで効率よく冷却されるMgイオンと衝突させて、任意のイオンを間接的に冷却することが可能である。これを利用して例えば4000KのBaイオンを500Kまで冷却できた。 2種のイオンがトラップ内に存在するとき、その間の相互作用を解明する必要がある。この場合共同振動モードが励起され、それが固有の周波数をもつことを実験と理論解析から明らかにした。この周波数の電圧を印加すると、特定のイオン振動のみを励起し、不必要なイオンをトラップから追い出すことが可能になり、実用的な応用が期待される。 2種のイオン間の共同冷却において、冷却極限温度をイオン質量・イオン温度の関数として計算して、この理論モデルの有効性を実験で確認した。ホストイオン温度が低いときは、ゲストイオンの質量は大きいほど効率よく冷却されるが、温度の高い領域では質量が大きいほど到達温度は高くなることが明らかになった。これら冷却されたイオン間相互作用の特性を2つの論文(Phys.Rev.A,66,67)に公表した。
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