1)諸原子による反陽子捕獲断面積の低エネルギー依存性につき比較的単純な理論モデル"diabatic ionization model"を提唱し、各原子についてこれに必要なdiabatic(透熱)エネルギー曲線に関するパラメータを、配置間相互作用法を用いて計算した。結果は日本物理学会や研究会で発表し、現在論文執筆中。 2)水素原子による反陽子捕獲を歪曲波近似で計算するための計算機コードを完成した。歪曲ポテンシャルとしての適切な選択につき考察した。 3)水素型ミュオン原子と陽子同位体との衝突によるミュオン移行反応の断面積はミュオン触媒核融合研究に不可欠で、基底状態から基底状熊への移行についてはいくつか研究があるが、励起状態から励起状態への移行は、それよりはるかに大きな断面積のためはるかに重要なのに、数グループで研究が数年前に始まったが、いまだ結果が報告されていない。そこで超球座標close-coupling法による精密計算を行い、論文を執筆した。 4)ポジトロニウムと反陽子との衝突で最も簡単な反物質「反水素原子」を生成できるが、同時に強いレーザー場をかけるとどう変わるかを、レーザー強度、波長、偏極方向、衝突エネルギー等のパラメータの特定の値について、古典軌道モンテカルロ法により昨年度に計算し、今年度に論文発表した。これらパラメータの範囲をさらに広げてダイナミクスの系統性を詳細に調べた。少なからず生成確率が上がることが判明した。 5)ポジトロンが分子に捕獲された束縛状態ができるか否かは、ポジトロンと分子との相互作用についての情報を与え、両者の衝突に共鳴が起こるか否か、ひいては電子・陽電子対消滅確率にも強く影響する。そこで束縛状態の計算を、数十の極性分子について行い、傾向を調べた。双極子モーメントが束縛エネルギーに大きく影響することがわかった。
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