研究概要 |
昨年度に引き続き、国立科学博物館筑波実験植物園の熱帯雨林温室内において熱帯植物(Shorea guiso他6種)から放出されるVOC成分を吸着管によって採取し、GC/MS測定を行った。その結果、新たに2-buten-1-ol, 2-methyl propanal, 2-methyl 2-propenal, 2-methyl furan, ethyl acetate, 2-(E)-hexenal, acetic acid 1-methyl ethyl ester, acetic acid butyric ester, 2-(1,1-dimethylethyoxy)-ethanol, hexanal, 4-hexen-1-ol acetate, 2-ethyl hexanol, 6-methyl-5-hepten-2-one, 3-octanone, 3-hexen-1-ol acetate, formic acid 1,1-dimethyl ester, 1-octen-3-ol, 2-propenoic acid2-methyl-methyl ester, 6-methyl-3-heptanoneなどの含酸素化合物が熱帯植物からの放出ガス成分として同定された。また、より低沸点成分を対象に熱帯植物19種からの放出ガスをキャニスターで採取して調べた実験では、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、プロモジクロロメタン、クロロジブロモメタンが検出された。塩化メチルと臭化メチルの放出は特にフタバガキ科と数種のシダ植物で目立った。 このように多様な熱帯植物から放出される多くのVOCの中で、熱帯林全体への寄与が大きいものを抽出するために、200種類以上の植物が生育する熱帯温室全体を放出ガス蓄積チャンバーと見立てて、その大気組成を外気と比較した。その結果、熱帯植物からの放出ガスの大半はイソプレン(〜50ppb)で、アセトン(〜5ppb)、アセトアルデヒド、塩化メチル(〜4ppb)、C4〜C10のアルデヒド、モノテルペン類、メタクロレイン、メチルビニルケトン、2-ブタノンが続き、アルコール、エステル類の寄与は小さいことがわかった。なお、ここで検出されたアルデヒド、ケトン類については、反応によって二次生成したものも一部含まれていると考えられる。今後、これら主要なVOCについて実際の森林大気中の分布、および発生量の支配要因について調べる。
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