研究概要 |
最初に,前年度に検討した4種類の反応制御技術の組み合わせによる9方式のメディア同期品質を更に詳細に測定し相互比較を行った.特に,アプリケーションレベルQoS(客観評価)とユーザレベルQoS(主観評価)という二つの観点から評価を行い,それらの定量的な関係を明らかにした.これにより,最終的に重要なユーザレベルQoSとメディア同期精度との定量的な関係が明らかになった. 次に,インターネットのルータでのパケットスケジューリングアルゴリズムが,ライブ音声・ビデオ転送におけるメディア同期品質に及ぼす影響を実験により調査した.前年度に行った予備実験をもとに,FIFO,Priority Queueing,Class-Based Queueing,WFQの4種類のアルゴリズムを比較した結果,WFQが最良のメディア同期品質を実現することが明らかとなった. また,DiffServのAFサービスを用いて,音声・ビデオとTCP及びUDPデータフローとを同時に転送する場合のメディア同期品質について検討した.まず,各ストリームのBAへの割り当て方を調査し,音声とビデオを別々のBAに割り当てることが望ましいことを示した.続いて,TCPとUDPのデータフローのメディア同期品質への影響を調べて,TCPフローはビデオと同じクラスで転送するのが有効であることを明らかにした.加えて,チャネル伝搬遅延がメディア同期品質に及ぼす影響も実験により評価した. 更に,本研究によって確立された要素技術を組み合せて,マルチキャスト通信による分散マルチメディアアプリケーションにおいて有用なメディア同期技術の開発も行った.第1に,ネットワークシューティングゲームのような因果順序の保存が要求されるアプリケーションを対象として,適応型因果順序制御とメディア同期制御(端末間同期制御も含む)とを融合した方式を開発し,その有効性を実験により実証した.第2に,ライブメディアとインタラクティブな操作がなされる蓄積メディアとを同時に扱えるメディア同期方式を考案し,その有効性を実証した.
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