研究概要 |
本研究は,波浪の主たる生成要因である海上風の推算を行い,それを基にした波浪推算手法について提案することを目的とするものである.まず,気象庁発行のGPVを計算対象領域の3倍程度の領域でLagrange補間した初期値,境界値に基づいて,運動方程式,連続式をSOLAスキームにしたがって解くことで,風場の時空間変化の推算を行った.これにより,台風が接近していない通常時の風場に関しては,周辺の地形の影響を反映した結果が得られ,さらに観測結果との比較により,その値も観測値とほぼ一致することが確認された.さらに,本計算により,風の鉛直分布も妥当に再現していることが確認された.これに対して,台風時に関しては入力値であるGPVそのものの精度に問題があり,結果として計算された風場の精度は必ずしも良くない.したがって,台風時のような空間的に差の激しい状況に対する推算精度の向上が今後の課題であることが明確になった. 一方,風波の予測に関して以下の知見を得た.まず,観測された波浪諸元と計算により求められた平均風速の間にも,昨年度の研究で提案した関係式が成り立つことを確認した.したがって,風波の推算に際しては,有義波高のような代表値を本計算により求められた平均風速を用いることで予測可能になったと考えられる.さらに,無次元周期と無次元波高との間の2/3乗則が計算により求められた平均風速を用いても成り立つことが確認され,風波の代表周期に対しても予測が可能になったと言える.すなわち,風波の波高・周期の予測を本計算手法による計算風から推算可能になった.今後,さらに局所的な風波の時空間変化の予測に発展させるとともに,風成流の予測も行う予定である.
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