研究概要 |
本研究では、循環型社会構築のための都市再生の基盤となる水・物質・エネルギーの収支について、都市部と周辺後背地との関係性に注目した分析を行った.対象地域の生産・生活・廃棄行動起源の環境負荷,とりわけ自然と人工の水循環に沿った環境負荷およびエネルギーの排出・伝播過程を追跡して、多段階のスケールでの循環を形成することによる環境影響の低減効果を評価する指標として環境効率を用いた地区別評価をする枠組みの検討をおこなった.本年度までに,都市域で使用される水に着目した分析を行い,都市および周辺地域での用途別需要水量を把握し,雑用水用途の水量を降水および下水道処理水の循環再生利用で補給可能性を評価する枠組みを提案し,大阪市・鳥取市を事例として比較検討した.さらに対象地区の環境負荷項目の計量化のための各種統計データの収集を行い、水循環経路に沿った環境負荷の計測を実施した。特に,下水道システムで収集される特定発生源からの汚濁負荷と,降雨流出に伴い非特定発生源から流出する汚濁物質についての観測を都市域と自然河川流域で実施し,都市部の環境負荷物質移動における降雨流出過程の寄与の大きさを定量的に評価した.また,都市および周辺地域での水熱循環利用システムとの連携を含め,有効な汚濁負荷削減策とりわけ沈殿処理効率を評価可能とするために,粒径別の懸濁態物質の流出過程をモデル化をおこなった.これらの調査・観測結果に基づいて、水の流れを中心とした経路に沿った都市域内外の複数の環境負荷放出経路のシステム構築の基礎的な検討をおこない、水・エネルギー・環境負荷の排出と再生・再利用のための地域連携循環モデルの基本的枠組みを構築した.
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