近代化産業遺産は、産業のみならず、暮らしや地域文化の歴史の宝庫として、今、注目を集めつつある。それは「遺産」として遺され、展示されるためだけではなく、多くが地域の環境とともに共生し、さらには地域のまちづくり資産としての価値に、人々が気づき始めたからにほかならない。 こうした近代化産業遺産が、わが国で学術的に体系づけられたのは最近のことである。1993(平成5)年、重要文化財の種別に、新たに「近代化遺産」が設けられたことにより、近代の産業遺産や土木施設が国の重要文化財としてようやく認められたことになった。その結果、わが国の近代化を担った土木や交通、産業施設の発掘保存が進み始めたというわけである。 研究の舞台である愛媛県新居浜市は、1691(元禄4)年の別子銅山開坑に始まる銅関連産業遺産の宝庫であり、新居浜・別子のまちづくりの起爆剤として大きな期待が寄せられていると同時に、それらをよく「街づくり学習」と連動させ、人づくりと地域の活性化へ結びつけようとしている。なかでも、高校生が中心となったインターネットを活用したまちづくり学習は、緻密な中味と、学校から世界へまちづくり発信をしていくというユニークな活動として一大展開しつつある。 本研究では、こうした生徒らのまちづくり学習の紹介と、その発展過程を明らかにするとともに、子ども(児童・生徒)を対象とした新居浜・別子の近代化産業遺産を生かしたまちづくりガイドブックを、大学と高校との協働作業により提案的に試みるものである。
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