GA_3処理により全てのブドウ品種を無核化できない原因を内生 GAsとの関係から明らかにするため、昨年度はGA_3処理により無核化し易い'キャンベル・アーリー'、中間の'デラウェア'および困難な'甲州'の3品種の種子中のGAsの量的・質的違いについて調査した。その結果、いずれの品種においてもHPLC画分番号13〜17(I)、22〜25(II)、26〜27(III)に強いGAs活性が認められた。しかし、品種によって各画分の活性の強さが異なり、総活性では'キャンベル・アーリー'、'デラウェア'、'甲州'の順に強かった。また、'キャンベル・アーリー'のIII画分中の主要GAsはGA_4とGA_7であることを明らかにした。そこで、本年度はGA_3、GA_4およびGA_7を開花前後の2回処理(100ppm)し、無核化に及ぼす影響を3品種間で比較した。その結果、'キャンベル・アーリー'では、GA_7(無核化率96%)>GA_3(71%)>GA_4(66%)、'デラウェア'ではGA_7(99%)>GA_4(97%)>GA_3(94%)、'甲州'ではGA_3(28%)>GA_7(16%)>GA_4(13%)の順に無核化率が高かった。しかし、無核化率から判断して、実際栽培で使用可能なGAsは'キャンベル・アーリー'ではGA_7、'デラウェア'ではGA_3、GA_4、GA_7であったが、'甲州'ではいずれのGAsでも無核化率が著しく低かった。この原因を各GAsで処理した小果の開花期の花粉の発芽率から調べてみると、'キャンベル・アーリー'や'デラウェア'ではいずれのGAsでも0.2〜0.8%と著しく抑制されたが、'甲州'では、GA_3で5.4%、GA_4で7.7%、GA_7で13.3%と抑制割合が低かった。このことから、'甲州'がGA_3、GA_4やGA_7で無核化できない一つの原因は、これらのGAsが花粉の発芽率を抑制する効果が低いためであると推察された。したがって、他のGAsすなわち昨年度の調査で明らかになったIおよびII画分のGAsの種類と無核化に対する効果を調査する必要があると考えられた。
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