GA_3処理により全てのブドウ品種を無種子化できない原因を内生GAsとの関係において明らかにしようとしてきた。これまでの2年間の研究により、いずれの品種においても内生GAsは3画分群(I、IIおよびIII)で活性が認められた。しかし、各画分の活性の強さは品種によって異なっていた。また、'キャンベル・アーリー'の主要内生GAs(III)である、GA_4およびGA_7が花粉発芽に及ぼす影響をGA_3と比較調査した結果、'キャンベル・アーリー'や'デラウェア'ではいずれのGAsでも発芽を抑制したが、'甲州'ではいずれのGAsでも抑制効果が著しく弱かった。 そこで本年度は、内生GAsと単為結果誘起能力との関係を明らかにするため、'キャンベル・アーリーおよび'甲州'から抽出したGAsを両品種の開花期と開花2週間後の2回除雄した子房(果実)に処理し、単為結果の誘起を試みた。'キャンベル・アーリー'のIII画分群処理は、両品種ともに高い着果率を示した。また、II画分群処理では'キャンベル・アーリー'および'甲州'ともに着果率は低く、I画分群処理では'甲州'のみ着果がみられた。これに対して、'甲州'のIII画分群処理は'キャンベル・アーリーで約40%の着果率が得られたが、'甲州'では全て落果した。II画分群処理では'キャンベル・アーリー'では100%の着果率を示したが、'甲州'では全て落果した。さらに、I画分群処理では'キャンベル・アーリー'では100%の着果率を示したが、'甲州'では約40%の着果率であった。なお、内生のGAsと花粉の発芽率との関係を調査した結果、内生のGAsとは関係なく、GAs活性が認められない画分で強い花粉発芽抑制が認められた。以上の結果から、品種によって単為結果あるいは果実の生長に関連するGAsが異なっている可能性が示された。また、単為結果を誘起するGAsと花粉発芽抑制とは関係ないことが判明した。
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