エネルギー消費を促進する食品成分を検索する研究の一環として、脂肪酸組成の異なる食用油脂の脂質代謝に及ぼす作用を追究した。すなわち、ラードのような飽和脂肪酸含量の高い油脂の過量摂取による体脂肪の蓄積や脂質代謝異常に対して、短鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸より成るサラトリムの添加がどのような効果をもつかを、不飽和脂肪酸の多い魚油およびサフラワー油の添加効果と対比させながら検討した。 エネルギー比で約40%を占めるラード食でラットを1ヶ月間飼育すると、対照標準食ラットに比べて白色脂肪組織重量は著しく増大し、肝臓の中性脂肪(TG)およびコレステロール(TC)含量も約2倍に増加した。また血清TGならびにTC濃度も有意に上昇した。ラードにサラトリムを1:1の割合で添加すると、これらの脂質代謝異常は抑制・改善されたが、サフラワー油の添加は無効であった。魚油の添加は血清TGおよびTC濃度を低下させる効果を示したが、肝臓中の過酸化脂質含量を増加させた。一方、血清中の遊離脂肪酸濃度はラード食と同様に、サフラワー油添加ならびにサラトリム添加で増加したが、魚油添加によって減少した。 代謝性熱産生を行う褐色脂肪組織重量はサラトリムあるいは魚油の添加で増大し、エネルギー消費が高まっている可能性がある。実際に、呼吸代謝計測装置を用いてラットの夜間摂食時12時間の累積酸素消費量を測定すると、摂取エネルギー量を一定にした場合、サラトリム添加群では対照標準食やラード食ラットよりも高いことが判明した。サラトリムはラードに添加すると、エネルギー消費を促してラードによる脂肪沈着と脂質代謝異常を改善する効果をもつ食用油脂であることが明らかになった。
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