研究概要 |
エネルギー消費を促進する神経内分泌機構を解析する研究の一環として、食欲促進作用を持つ一群の神経ペプチドおよびノルアドレナリン(NA)を無麻酔下でラットの第三脳室内に投与し、酸素消費量ならびに呼吸商がどのように変化するかを小動物代謝計測システムを用いて追究した。用いた神経ペプチドの投与量は、ニュロペプチドY(NPY,200ng),オレキシンAおよびB(300ng-2μg),ガラニン(400-600ng)、メラニン濃縮ホルモン(MCH、3-5μg)、グレリン(1μg)およびNA(16μg)であり、以下の実験結果を得た。 1.対照ラットと比べた投与後2時間の摂食量の増加は、NPY、NAが最も大きく、次いでガラニン、グレリン、MCHも摂食量を有意に増加させたが、オレキシンAならびにBは用いた投与量では増加傾向を示したに過ぎなかった。 2.2時間の酸素消費量は、オレキシンAの中枢投与で著明に増加したが、NA投与では一過性に低下した。しかし、NPY、ガラニン、グレリン、MCH、オレキシンBなどの投与では酸素消費量に有意な変化は認められなかった。 3.呼吸商はNPYの投与で増大し、脂肪の燃焼が抑えられると思われるが、NAの投与では逆に一過性に低下した。また、グレリンの投与は呼吸商を増大させる傾向があった。つまり、これらの食欲促進物質の投与で、体内で燃焼される栄養素が異なってくることを示唆する。しかし、その他の神経ペプチドの中枢投与では、呼吸商に有意な変化がなかった。 本研究の結果から、エネルギー消費に及ぼす食欲促進物質の中枢作用は必ずしも一様ではないこと、また、作用物質の種類によって体内で消費される栄養素が異なると考えられる。
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