研究概要 |
【はじめに】ステロイドホルモン投与による骨粗鬆症発症に関与する遺伝的素因を解明する目的で、ステロイドホルモン感受性を規定すると考えられる遺伝子多型について検討した。体内に吸収されたグルココルチコイドは一部は肝臓で主にCYP3A4により代謝され、一部は標的細胞に至る。標的細胞内では11β-hydroxysteroid dehydrogenase type2(11β-HSD2)で一部は不活化され、残りはグルココルチコイド受容体(GR)と結合しその作用を発現する。今回はGRおよび11β-HSD2遺伝子について検討した。【方法】各遺伝子の多型部位を含む領域をPCR法で増幅し、ダイレクトシークエンス法にて検討した。対象として、健常日本人50名および文書による同意の得られたステロイド投与患者7名を用いた。患者はステロイド投与前および投与開始後1-2ケ月ごとに骨塩量を系時的に測定した。 【結果】欧米で既報のGR遺伝子のN363S多型および11β-HSD2遺伝子のG534A多型は、健常日本人およびステロイド投与患児においては認めなかった。そこで、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターと科学事業振興事業団の共同プロジェクトであるJSNPの日本人のSNPデータベースを検索し、登録されているGR遺伝子上の3ケ所のSNP(JST006606,032069,057143)について検討した。ステロイド投与患者での骨塩量の最大低下率(投与開始前の測定価に対する%)を各多型別に比較した結果、JST006606ではC/Tを有する患者で低下率が小さかった。JST032069では特定の傾向は認めなかった。 【考察】今後さらに症例数を増やして検討するとともに、CYP3A4遺伝子の2種類のSNPについても検討する予定である。
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