研究概要 |
外胚葉形成異常症(ectodermal dysplasia)は神経、皮膚、歯牙に代表される外胚葉由来の臓器の発生における異常であり、古くは1875年のDarwinの記載にもあり、これまでに150以上の臨床表現型が知られている比較的稀な疾患である。このうち最も頻度の高いものが伴性劣性無汗性外胚葉形成異常症(X-linked hypohidrotic ectod ermal dysplasia, XLHED)である。1996年、連鎖解析、ポジショナルクローニングにより本疾患の遺伝子ED1が同定され我々も本邦のXLHED患者において、新規の変異を検出し遺伝子診断に成功し報告した(Yotsumoto S, et al.,J Invest Dermatol 111:1246-1247,1998)。その後日本国内の諸施設から遺伝子変異同定依頼の為に患者の検体が我々のところに集まってきている。そのうち新規の変異3つを含む8家系についてまとめている(Hashiguchi T, Yotsnmoto S, et al.,投稿中)。ED1がコードする蛋白(ectodysplasin-A, EDA)はtypeII膜貫通蛋白で、細胞外にTNF(tumor necrosis factor)モチーフ、小型コラーゲン部、それにfurin結合部を持ち、furinが同部を切断することによりEDAが遊離され機能を発揮する。日本の症例において9例中5例はfurin結合部に変異を認め、EDAが遊離されないことが発症の原因と推測された。
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