放射性ストロンチウム治療は認可見通しとなっていたが、予期せぬ事態から現在も治験延長中である為に、放射性ストロンチウム治療を対象に検討できない。そこで、比較対照として同様な骨転移除痛目的で行われる放射線照射治療について、放射線組織障害を予備的に検討することを考えた。骨転移除痛目的で行われる放射線治療に比して、骨への照射範囲が広く・照射量が多いと考えられる食道癌患者の放射線治療を対象に、リンパ球の組織障害を検討した。対象は、正常者8名及び放射線治療の食道癌患者(12名)である。方法、治療前及び治療後一週間以内に患者より採血してした血液を、遠心・分離しリンパ球を得た。リンパ球を培養液上で分裂刺激剤であるPHAを投与し、培養44時間後には分裂阻止剤であるCytochalasin Bを投与した。全培養は72時間にて終了した。リンパ球をAcridine orangeで染色し、蛍光顕微鏡にて観察し検討した。二核細胞500個当たりの小核細胞の出現数として算出した。また、0-2Gyまで段階的に正常リンパ球に照射をin vitroで行いそれぞれの小核細胞の出現率を評価した。結果は、正常者では照射量と小核細胞の出現数には正の相関が見られた。リンパ球の二核細胞500個当たりの小核細胞数は、放射線治療前は8.8±1.8で治療後は52±10.7で、有意の増加を示したが頻度は軽度であった。我々が確立した小核試験により、放射線のリンパ球に対する組織障害を評価可能であることが明らかとなった。食道癌における放射線治療では、リンパ球の放射線組織障害が小核試験によって軽度検出された。以上の結果より、骨転移の放射線治療の短期的な副作用であるリンパ球に対する放射線障害の程度は、最低限度と推測された。
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