研究概要 |
1)T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞が滅失しているγ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスにおいて、ヒト大腸癌切除材料の一部を同マウスの皮下に移植した場合、腫瘍細胞が生着し、マウスの筋層、血管内へ浸潤することが示された、これは従来の免疫不全マウス(ヌードマウス、スキッドマウス)には認められない所見である。 2)マウス脾臓にヒト大腸癌細胞株HT-29を注入し、肝転移を形成させるモデルにおいて、従来からヒト大腸癌転移モデルに用いられているヌードマウス、スキッドマウスと、γ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスにおける肝転移巣形成能の比較検討を行ったところ、γ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスの方が肝転移巣形成能が有意に高く、転移モデル動物としての有用性が示された。 3)1)2)の結果は、BALB/c由来、C57 Black/6由来の双方のγ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスで確かめられたが、特にBALB/c由来のγ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスにおいて皮下移植片の生着、浸潤能、肝転移能が高い傾向にあり、今後のヒト大腸癌転移モデルの作成に有用と考えられる。 4)ヒト大腸癌切除材料の部を同マウスの皮下に移植し、腫瘍塊が十分に大きくなってから再び当科で従来から行っている抗癌剤感受性試験(HDRA法)を施行したところ、移植前とほぼ同様の結果が得られた。このことからもγ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスの体内においてヒト大腸癌が従来の形質を変化させずに生着することが確認された。 4)γ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスを用いたscid/hu mice作成を行い、ヒトリンパ球がマウスの体内に一定期間は生着することを確認している。今後は、凍結保存した患者血清からCD4+, CD8+, CD34+リンパ球を抽出し、ex vivoで賦活化し、皮下移植した大腸癌組織に対する癌ワクチン療法の実験モデル作成を行う予定である。 5)γ鎖/RAG2ダブルノックアウトマウスの皮下に移植した大腸癌組織に対するhuman endostatinと抗癌剤の併用効果については現在検討中である。また、当科で従来から行っている抗癌剤感受性試験(HDRA法)を用いて5-FU, CDDP, MMC, SN38などの抗癌剤とendostatinの併用効果についても合わせて検討を行っている。
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