研究概要 |
本研究でヒト大腸癌に対する特異的免疫治療の動物実験モデルの開発を行った。 ヒト大腸癌切除材料の部を、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞が滅失しているダブルノックアウト(DKO)マウスの皮下に移植した場合、腫瘍組織が高率に生着し、マウスの筋層・血管内へ浸潤することが示された。これは従来の免疫不全マウス(ヌードマウス、スキッドマウス)には認められない所見である。 また、マウス脾臓にヒト大腸癌細胞株HT-29を注入する肝転移モデルにおいてもDKOマウスは肝転移巣形成能が有意に高く、ヒト大腸癌転移モデルとしての有用性が示された。これらの結果は、BALB/c由来、C57BL/6由来の双方のDKOマウスで確かめられたが、特にBALB/c由来のDKOマウスにおいて皮下移植片の生着・浸潤能、肝転移能が高い傾向がみられた。 ヒト大腸癌切除材料の一部をDKOマウス皮下に移植し、腫瘍塊が大きくなってから抗癌剤感受性試験(HDRA法)を施行したところ、移植前とほぼ同様の結果が得られた。このことからDKOマウス体内でヒト大腸癌が従来の形質を変化させずに生着することが確認された。 大腸癌細胞株に対して抗癌剤(5-FU, CDDP, CPT-11(SN-38))を投与してCEAおよびMHC class Iの発現の変化を検討した。In vitroではIC_<50>の濃度でヒト大腸癌細胞株COLO201はすべての抗癌剤でMHC class Iの発現が増加し、CEAについては5-FUのIC_<50>投与時にFACS, CEA.652のprimerを用いた定量的RT-PCRで発現が増えているのが認められた。Colon26を用いたin vivo実験ではすべての抗癌剤の少量持続投与によりMHC class Iの発現が増加し、CDDP投与群では腫瘍増殖抑制効果を認めた。この実験の結果、大腸癌に対する化学療法と癌ワクチン療法の併用効果の可能性が示唆された。
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