1.悪性グリオーマにおけるアポトーシス関連分子の発現と放射線化学療法感受性 1987-2000年までに一律の治療(可及的摘出+放射線療法+化学療法ACNU±IFN-β)を行った退形成星細胞腫(AA)29例、退形成乏突起膠腫(AO)9例および退形成乏突起星細胞腫(AOA)17例を対象として、アポトーシス関連分子p53、Bcl-2、Baxの発現を免疫組織化学で評価し、組織型および治療反応性との相関を検討した。またAA 8例、AO 5例およびAOA 10例においてはイーストを用いたp53のfunctional assayも行った。免疫組織化学におけるp53の陽性率はAA 7/29、AO 0/9、AOA 0/17、Bax陽性率はAA 14/29、AO 9/9、AOA 15/17で組織群間で有意差があった。p53 functional assayではmutationがみられたのはAO 0/5、AOA 1/10であったのに対してAAでは8/8と組織型間に有意差がみられた。治療に対する反応とBcl-2とBaxの発現パターンをみると-/+の17/19に反応が見られたのに対して-/-および+/+ではそれぞれ1/13および4/10に反応が見られたのみで、発現パターンと治療反応に有意差がみられた。以上のことよりAOおよびAOAはAAに比較して有意に放射線化学療法の感受性が高く、それは治療によりもたらされたDNA傷害からアポトーシスに至る機構が関与していることが示唆された。 2.悪性グリオーマ髄腔内播種モデルの作成および髄腔内化学療法による治療 1)ラット悪性グリオーマ細胞株C6の細胞浮遊液を体重150gのラット大槽内に接種して髄腔内播種モデルを作成した。2)このモデルを用いてACNU、リポソーム包埋ACNU、リポソーム包埋BCNUを大槽内に投与したところ、リポソーム包埋ACNUおよびリポソーム包埋BCNU群に治療効果を認めた。 3.悪性グリオーマ細胞株におけるアポトーシス関連分子の発現及びその導入 ラット悪性グリオーマ細胞株C6および9Lにおいてそのcell lysateを抽出してWestern blot法にてBcl-2の発現を調べたところ、いずれの細胞株でも検出不能な低レベルであることが判明した。そこでこれらの細胞株に、Bcl-2蛋白を高発現している腎癌細胞株ACHNより作製したbcl-2 cDNAをベクターに組み込んでliposome-mediated gene transfer methodにより導入し、Bcl-2蛋白を高発現しているクローンをneomycinにより選別しこれを継代して細胞株を確立した。これらの細胞株がBcl-2蛋白を高発現していることをwestern blot法にて確認した。
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