対象:2000年6月より2002年11月までに50歳以上の男性160人を対象に疫学的研究を行った。 方法:1.食生活(肉類、魚介類、野菜類、米食)、嗜好品(タバコ、アルコール)の問診調査を行った。 2.前立腺重量の算出 経直腸的超音波断層法(TRUS)にて測定し、正常前立腺群と前立腺肥大群に分類した。 3.血中ビタミンA(レチノール、ベータカロチン、レチノール結合蛋白)および脂質(総コレステロール、トリグリセリド)を測定した。 結果:1.前立腺肥大群(40例)、正常前立腺群(120例)において、年齢、身長、体重で有意差を認めなかった。 2.問診調査では、当該地域は両群共に肉類摂取頻度が低く、魚介類、野菜類、米食の摂取頻度が高い傾向を認めた。 3.血中ビタミンA群ではベータカロチンのみが前立腺肥大群において有意に高値であった。 考察:今回我々は前立腺増殖に対する環境要因としての食生活、特にビタミンA群に注目し疫学的研究を行った。 ビタミンA群の中で、ベータカロチンは有機物の酸化分解を防ぎ、免疫力増強作用による癌抑制効果が推測されているが、上皮細胞の成長、生殖機能にも関与しており、この作用が前立腺増殖に影響している可能性が考えられた。ベータカロチンは前立腺増殖に対しpositiveに作用している可能性が示唆された。
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