研究概要 |
スーパー抗原であるstaphylococcal enterotoxinB(SEB)はFas/FasL経路を介して末梢血単球(CD80^-)にアポトーシスを誘導し、LPSはこれを抑制することを報告した。本年度は単球のアポトーシスに伴って、どの種のcaspaseが活性化され、アポトーシスを引き起こしているのかを中心にして研究を行った。一連のcaspase群はDNA断片化を促進する酵素であり、アポトーシスにはcaspaseの活性化は必須である。このために、SEB処理単球の細胞溶解液を準備し、それぞれのcaspaseの発色基質を加え、45分間室温での反応後、遊離されたpNAを測定した。その結果、SEB刺激によりcaspase-3, caspase-8, caspase-10の活性が上昇し、caspase-1, caspase-9の活性化は検出できなかった。このことは、これらのcaspase阻害剤を用いたアポトーシス抑制実験により確認された。これらの結果は、Fas/FasL経路を介したアポトーシスを示唆しており、先に報告したSEBによる単球のアポトーシスの解析結果とよく一致した。さらに、LPSによるアポトーシス抑制のメカニズムを解析するために、単球系細胞株であるTHP-1細胞を用いて実験を行った。その結果によると、LPSは転写因子の一つであるNK-_κBの活性化を促進し、抗アポトーシス蛋白を合成することでcaspase cascadeを阻害し、アポトーシスを抑制することが示唆された。以上の結果より、生体にとって有害である細菌由来のスーパー抗原によるTリンパ球の異常な活性化は、同様に有害菌体成分であるLPSによって緩和されることが明らかとなり、生体が恒常性を維持するための巧妙かつ重要な機構の一つと云える。
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