研究概要 |
細菌性スーパー抗原(SEB)はTリンパ球の異常な活性化を誘導し、生体にとって有害である。生体はLPSを利用してスーパー抗原の毒性を緩和することを示した。また、スーパー抗原の作用にとって重要な補助シグナル分子、特に抗原提示細胞(単球)上のCD80分子について詳細な解析を行った。単球上のCD80分子はSEB刺激によりTリンパ球より産生されるインターフェロンγ(IFN-γ)の作用により誘導されるほかに、SEB処理により産生される可溶性Fas Lにより引き起こされるCD80へ-単球の選択的アポトーシスによりCD80^+単球が増加することが示された。また、IFN-γにより活性化されるNF-KBがCD80遺伝子の転写を促進すると同時に、NF-κBによる抗アポトーシス蛋白の合成を通してCD80^+単球にアポトーシス抵抗性を付与していることも明らかとなった。SEB刺激による単球のアポトーシスでは、Fas/Fas L経路の特徴であるcaspase-3,caspase-8の活性化が観察された。caspase阻害剤であるz-VAD-fmkの使用は、アポトーシスの抑制と同時に、CD80^-単球がアポトーシス死を逃れることから、結果としてCD80^+単球の割合が減少した。本研究を通して、SEB刺激は単球に相反する作用を加えることが明らかとなった。すなわち、IFN-γによる活性化NF-κBを介した抗アポトーシス作用と可溶性Fas Lの放出によるアポトーシス促進作用がSEB処理には含まれており、これらの作用はいずれも単球上のCD80分子を誘導、保持のために機能し、このことはスーパー抗原による異常なTリンパ球の活性化の有力な機構となっている。
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