研究概要 |
平成12年度は咀嚼・嚥下障害患者の舌運動に関連した動画像データのVF撮影装置による採取を行った.VF装置はシーメンス社製のマルチパルス-特殊Cアーム型である.VFの動画像データは8ミリビデオテープとパソコンによるディスクアレイシステムにより保存している.舌の造影はバリトップ120(カイゲン社)を用いている.咀嚼開始から嚥下終了までの動画像データの画質を最高に保つには,通常20MB程度の大きな容量が必要となるが,このままの容量ではネットワーク内で利用しにくい.ユーザが画質を落とさずに快適なスピードで動画像を利用できるようにするための動画像処理の方法の検討を行った.VFの動画像処理用のソフトとして用いているMedia 100における取り込み条件の設定を明らかにした. 次年度に向けては,臨床応用方法の検討を行っている.臨床的評価には歯科医学的情報や咀嚼・嚥下障害の病態の理解とVF動画像との対応の検討が必要である.VF画像の診断を基にした咀嚼・嚥下障害をもつ患者の治療を進めるとともに撮影された咀嚼・嚥下の異常所見から舌が関与する問題点を抽出している.特に,全部床義歯装着患者の下顎義歯の維持・安定に舌が大きく関わっているという仮説をたてて,これを基礎的,臨床的に明らかにすべく検討を行っている.この他に義歯等の治療方針の決定,咀嚼・嚥下し易い食物性状の決定,舌の運動訓練等の治療プログラムを検討することなども考えている. さらに,摂食・嚥下障害者における舌の役割には,脳や神経系と密接な関係があることが,各種の動物実験によっても明らかになってきた.これを基にして,口腔咽頭の感覚と運動をつかさどる神経系の動的障害における生理学的病態の解析・検討も平行して行っている.
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