本研究は、スポーツ競技者養成の「場」のなかでも学校運動部と民間スポーツクラブに着目し、両者を自ら相対的自立性の獲得(正統性の形成)のために独自に再生産戦略システムを有する「場」として捉え、それぞれ異なる「場」の文化的再生産を主にハビトゥス形成とその「場」の有する再生産戦略との関係で検討することを目的としている。この目的の達成のために本年度は主に以下のことを実施した。 まずわが国の学校運動部について、本年度は、全国高等学校体育連盟および(財)日本中学校体育連盟の成立過程を歴史社会学的に考察することを目的として、その資料収集に務めるとともに、その変容過程をスポーツ界ならびに教育界の象徴闘争のプロセスとして把捉しつつ、社会的動向、社会的心性の変容と関連づけながら検討を行った。現在、それぞれの連盟毎に分析を継続しているところであるが、今後それぞれの連盟間の関連性を含め学校運動部とスポーツ界の構造変容を検討していく予定である。 次に「民間スポーツクラブ」の「場」をめぐる再生産戦略プロセスを明らかにするために、民間スポーツクラブの指導者に着目し、昨年度に回収を終えていたサッカーの指導者のデータに加え、民間スポーツクラブを中心に競技者養成が行われている水泳、体操競技の指導者に対する社会調査を実施。調査においては、質問紙を用いた郵送法により実施した。ここではスポーツ価値意識も含め、主に指導者が有する「学校運動部」および「民間スポーツクラブ」の社会的表象(イメージ)に焦点を絞り、既に実施した両下位「場」の選手の有する社会的表象(イメージ)との比較検討を行っており、現在、民間スポーツクラブにおける相対的自立性の獲得に向けた再生産戦略との関連で検討しているところである。
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