研究概要 |
本研究はスポーツ競技者養成の「場」のなかでも学校運動部と民間スポーツクラブに着目し、両者を自ら相対的自立性の獲得(正統性の形成)のために独自に再生産戦略システムを有する「場」として捉え、それぞれ異なる「場」の文化的再生産を主にハビトゥス形成と再生産戦略との関係で検討することを目的として行った。本年度の主な結果は、以下の通りである。 まず、わが国における競技者養成の「場」の構造変動に関わる学校運動部と民間スポーツクラブの戦後制度史の整理分析を行った。その際,(財)全国高等学校体育連盟および(財)日本中学校体育連盟の成立過程を踏まえつつ,1964年の東京オリンピックを契機とする民間スポーツクラブの誕生及びその成立プロセスの分析を行った。民間スポーツクラブは、学校運動部を対象化しつつ、自らの相対的自律性の獲得にむけた象徴闘争を惹起させており、その基盤に<競技力>という文化資本とその隠蔽のメカニズムの存在が示唆された。 さらに「民間スポーツクラブ」の「場」をめぐる再生産戦略プロセスを明らかにするために、民間スポーツクラブの指導者に着目し、民間スポーツクラブを中心に競技者養成が行われている水泳、体操競技、サッカーの指導者に対する社会調査を実施、分析を行った。分析は、主に民間スポーツクラブの競技者データ(平成12-13年度分析)との比較を通して行われ、指導者の再生産戦略システムを教育戦略、象徴戦略、対人戦略の視点で検討した結果、それぞれ学校運動部を比較対照化しながら、その差異化を行っていた。とくに民間スポーツクラブにおいて学校運動部の伝統的な価値意識を相対化し、教育戦略における勝利志向の隠蔽と全力性、楽しみ重視、象徴戦略におけるプロフェッショナル性、平等性、民主性、流行性、などの意識化、対人戦略における親の取り込みと共同支援体制化の促進等による正統性の獲得機能が示唆された。
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