研究概要 |
1.昨年度に引き続き、Bacillius stearothermophilus 由来リシルtRNA合成酵素(B.s.LysRS)遺伝子を組み込んだ大腸菌中でB.s.LysRSを発現させ、単離・精製し、電気泳動的に単一な標品を得た。この標品を用いて、結晶化条件をHampton Research社のCrystal Screen Kitにより検索し、3条件に絞り、更にその周辺の条件を微小に変化させて検索した。その結果、0.125M MgCl_2,0.1M HEPES buffer pH7.5,30%PEG400,20℃でX線結晶構造解析に適した結晶を得た。京都大学大学院農学研究科の三上助教授の指導協力によりX線回折像を得た。現時点での最良データは以下の通りである。結晶系:斜方晶系;空間群:P2_12_12_1;単位胞:a=54.715Å,b=123.419Å,c=157.603Å,α=β=γ=90°;非対称単位あたりの分子数:2;溶媒含量:49%;検出器:Bruker Hi-star(Multiwire);全反射数:96.337;独立反射数:30.246;分解能限界(Å):2.63;Rsym(%):14.0:完全性(%):92.52。このデータに基づき、Escherichia coli 由来のLysRS(U)の構造(PDB le10(dimmer))を基準として分子置換法によりB.s.LysRSの分子モデル構築を行いつつある。同時に、未だ分解能が期待値より低いので、更に良好な結晶を作成すべく条件の検索を続行中。一方、B.s.LysRSと基質L-リシンとの複合体の結晶化をも試みつつある.母液中にL-リシンを共存させ、上記と同様の手段で結晶化条件を絞り、現在、0.4M CaCl_2:0.1M Tris buffer pH8.2;10%PEG20000,20℃でやや有望な結晶を得ているが、更に、条件の微少調整が必要である。 2.昨年度に引き続き、基質L-リシンのカルボキシル基と相互作用すると推定されるB.s.LysRSのAsn414およびArg402につき、前者をAlaまたはArgに、後者をMetまたはLysに変えた変異酵素を作出・精製し、これらとL-リシンとの結合を蛋白質蛍光変化を指標として測定し、基質認識に関与する微細環境条件を解析した。
|