平成12年度は、関連文献の講読を準備作業として進めると同時に、ケニアのサンブルを対象として、自然・家畜・人間認識に関連する現地調査を集中的に行い、基礎資料収集に努めることを計画していたが、準備作業が整った段階で、平成13年1月7日から2月21日にかけてケニアに海外出張し、ナイロビ大学アフリカ研究所との協同関係のもと、調査研究を実施することができた。 本年度の調査研究においては、特に植物認識に関する基礎資料作成を重視し、サンブル県内の各地において約200体の植物を収集し、標本を作製すると同時に、その利用法を中心とした体系的な聞き書きを行った。これらの標本は、植物学の研究者との協同作業で、現在学名の同定作業を進めている段階にある。 本年度の調査の結果、発見できたおもな課題は、以下の三点である。1.サンブルは、植物を食用、薬用、牧草、道具や家屋製作の材料として利用するのみならず、家畜薬、殺虫剤、染料、洗剤、玩具等としても利用しており、植物利用の幅は極めて広範に渡ることがわかった。現在、生活必需品が担っている役割のほとんどを、サンブルはかっては植物利用によって果たしていたと推測されるため、植物利用が現代的な日用品に置換されていった「もの」の歴史的変遷を再構築する作業に成果が期待できる。2.サンブルの植物分類は、基本的には、その実用的利用法を基礎としており、牧草とするか否か、道具の製作に適しているか否かによって植物が命名・細区分されることも多い。3.白い樹液を「乳」と呼んだり、植物の模様を家畜の模様と同じ言葉で呼ぶなど、サンブルの植物認識は、家畜の認識と分かちがたく結びついている。 これらの課題に基づいて、今後は、積極的に課題重点化の作業を進め、次年度は、植物に関しては種類を限定して、さらに詳細な調査を行うと同時に、動物認識や対人認識との比較作業を進めることを計画している。
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