昨年度より代数的サイクルと混合モチーフについて研究している。混合モチーフは数論的代数幾何学における壮大な構想であり、理論として確立されたあかつきには、代数幾何学のみならず整数論へも数多くの深い応用をもつことが期待されている重要な分野である。 しかし多くの優れた研究者の努力にも関わらず、混合モチーフはいまだ定義すらない極めて研究の困難な分野でもある。 私は特に複素数体上の混合モチーフの理論を確立することを目的として研究してきた。これまでに、数論的ホッジ構造という概念を導入し、代数曲面上の0-サイクルや、代数曲線のK群についてのブロック予想について研究してきた。 本年度の研究では、代数曲線のK群に関して更なる研究結果を得ることに成功した。より詳しく説明すると、これまでK群の元を扱うときにその元のサポートに条件がついていたのであるが、その条件を弱めることができた。これにより私の作ったレギュレーター写像の核に非自明なものが現れることがわかり、しかもその核が具体的に求められることが分かった。このようなことはこれまでに知られていなかったことであり、極めて興味深い結果であるといえる。更に副産物として、K群の像に関するベイリンソン予想を満たす多様体の例を構成することにも成功した。 これらの研究結果は、論文として公表するため執筆中である。また多くの研究集会、セミナー等においても講演した。特に本年度は、国際研究集会「代数幾何2000」(長野県穂高町)において招待講演を行ったほか、2月にはパリ大学においてワークショップ「Mixed Motives」およびパリK群セミナーにて講演を行った。
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