研究概要 |
近年,諸外国の追い上げと日本の人件費の高騰により,新造船の建造コストにおいて,日本の造船業の優位性は失われつつある.この問題を対策する手法の一つとして,建造工程のアウトソーシングが考えられる.建造工程のアウトソーシングを実施する際には,アウトソーシングの対象となる工程や,その提携先などに関する高度な判断が要求されるため,計算機による支援が必要である.本研究では,特に造船の中日程計画に着目し,生産技術者が必要に応じて他社の様々な生産環境を計算機上に定義でき,さらに定義された生産環境を利用して生産計画を立案できる,生産計画支援システムについて検討する. 初年度である本年は,生産技術者による自由な生産環境の定義を可能とするために,生産環境モデルについて検討した.建造工程のアウトソーシングに基づく生産活動では,企業間の搬送等に伴い,運搬作業や停滞作業の比率が増加する.このために,造船CIMの生産環境モデルに,空間的情報および移動経路の情報を付加した.更に,生産技術者による自由な生産環境の定義に対応するために,E-Rモデルの概念と一般設計学における認識公理を生産環境モデルに適用した.これにより,設備,工程および工場は実体として表現され,その能力などは属性として表現される.生産技術者は,実体や属性を関係によって組み合わせることにより必要となる生産環境モデルを定義する. 以上の考察に基づき,生産環境モデルを定義するためのフレームワークとして,実体モデル,属性モデルおよび関係モデルを定義した.さらに,そのフレームワークを利用して生産環境モデルを定義することのできるプロトタイプシステムを構築した.この検証は,定義された生産環境モデルを利用して,実際に生産計画を実施することにより可能となる.このために,来年度は,定義した生産環境モデルを利用した生産計画支援システムについて検討する.
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