傍悪性腫瘍性神経症状は、抗神経自己抗体により引き起こされると考えられている場合が多いが実際にその抗原となっている分子を同定した例は少なく、さらにその抗体が神経症状の直接の原因になっていることを証明した例は末梢の神経筋接合部に作用する抗Ach受容体抗体やCaチャネル抗体の例に限られていた。我々はホジキン病患者のうち小脳失調を合併した症例2例より代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR1)の自己抗体を発見した。この自己抗体はmGluR1の活性化を阻害する効果がありマウス小脳に注入することにより失調症状を再現することができる。これは機能的に受容体をプロックする抗体が人間の中枢神経症状を引き起こしうるということを証明した初めての例であり2000年1月にNew England Journal of Medicineに発表した。その後も同様の患者を見つけるためのscreeningを続け100例ほどの患者血清を調べたが現在までのところ同じ性質のものは見つかっていない。ただある種のK channelと極めて似た免疫染色パターンを示すものがあり、この抗原を今後同定したいと考えている。
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