スチレン系含けい素ポリマーであるポリ(4-ビス(トリメチルシリル)メチルスチレン)(以下BSMS)を合成し、その成膜性、含水率及び湿潤状態でのガス透過性に関して検討した。その結果、BSMSはアゾビス系開始剤を用いたラジカル重合により分子量数十万程度のものが得られ、その成膜性に関しても通常のキャスト法により透明な膜が得られた。また、熱分析により含水率を求めると1.6%であった。さらに実際のコンタクトレンズ使用の場合と同じように湿潤状態における酸素透過性を製科研式フィルム酸素透過測定装置により測定した。この時、膜素材値としての酸素透過能を比較するために試料膜厚をかえて測定し、液相抵抗の影響を除去した。その結果、ポリBSMS膜の酸素透過性は41×10^<-11>cm^3(STP)cm/cm^2・sec・mmHgと求められた。この値は市販の使い捨てソフトコンタクトレンズの値よりも高い数値を得ることができた。しかし、ポリBSMSは水をほとんど含まない為に膜が硬くソフトコンタクトレンズとしての実用性は低いと考えられた。そこで、このBSMSと種々の親水性モノマーである2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMA)やN-ビニルピロリドン(以下NVP)との共重合を試みた。重合はアゾビス系開始剤を用いたラジカル共重合により行った。その結果、BSMSはHEMAとは共重合性がよいものの、NVPとは共重合性が低いことが確認された。事実、BSMSとHEMAあるいはNVPをモル比で等量仕込んで1時間重合させると両者とも重合は進行するものの得られたポリマー中のBSMS含率はそれぞれ45%及び92%という結果が得られた。この結果は上記共重合性の違いの考察を支持するものと考えられる。今後は、仕込み比率を調整して重合を行い、柔軟なポリBSMS共重合体膜を作成する予定である。
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